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Life

「こうしなきゃ」なんてない。社会通念に振り回されない働き方・生き方を見つけるには?

働き方改革やワーク・ライフ・バランスが叫ばれ、働き方や生き方が多様化しつつある現代。
新型コロナウイルスの影響で、この1、2年はますますその流れが進んでいる印象があります。

選択肢が増えるのはうれしい反面、選べるからこそ迷ったり悩んだりしてしまう方も多いかもしれません。
これが正解、と誰もが言えるような答えがない時代に、私たちは何を道しるべとして進んでいけば良いのでしょうか。

キャリアサポートの専門家として多くの女性たちの相談に乗ってきた株式会社NOTICE代表取締役の布谷由美子さんにお話を伺い、これからの働き方や生き方について考えるための糸口を探ります。

PROFILE

布谷 由美子株式会社NOTICE 代表取締役

神戸女学院大学卒業後、一般企業に就職するが結婚を機に退職。子育てをしながら行政職員として復職し経験を積んだ後、株式会社NOTICEを設立し独立。企業のキャリア支援、コンサルティング業務のほか、神戸女学院大学をはじめとする大学でキャリア授業の講師を務める。神戸大学大学院人間発達環境学研究科人間発達専攻博士課程(前期課程)修了。

一度はキャリアを諦め、専業主婦から再スタート

布谷さんは20年以上にわたり、多くの女性たちのキャリアカウンセリングを行ってきました。でも、自身のキャリアは決して順風満帆なものではなかったと語ります。

「大学卒業後、民間企業に就職しましたが、2年目に結婚して退職しました。その頃は、女性は結婚したら仕事を辞めるのが当たり前。『25歳を過ぎたら売れ残り』なんて失礼なことも平気で言われていた時代でした。私自身は結婚しても働き続けたいと思っていましたが、そんな自分の気持ちに蓋をしていました」

退職後、しばらくは専業主婦として過ごしていた布谷さん。

「結婚して子どもが生まれて、一般的には幸せだと言われる状況ですよね。でも私は、働いて社会の役に立つことが自分らしく生きることだと思っていたので、それができなくなってとても辛かった。子育て自体は幸せでしたが、今の私は自分らしくない、自分の人生は終わったなと思って過ごしていました」

当時の布谷さんは、まだ24歳。いわゆるワンオペ育児に奮闘しながら“自分の人生は終わった”とまで思っていた日々を想像すると、胸が痛みます。

そんな布谷さんに転機が訪れたのは、26歳の時。友人の紹介で宝塚市の女性センター(現・男女共同参画センター)に通うようになり、センターでこんな言葉をかけられたと言います。

「働きたい、勉強したいと思うのは普通のこと。女性だからダメ、母親だからダメと言われるのは社会の問題であって、あなたがおかしいわけじゃないと教えてもらったんです。確かにそうですよね。今だったらそんな考え方のほうがおかしいと言われるはず。でも当時の私は、働きたい、勉強したいという自分の考えがおかしいと思っていたんです。社会は時代とともに変わっていくものだから、社会通念に振り回されないでほしいと、今の若い人たちにも伝えたいですね」

その後、布谷さんは「今の自分にできることを」とボランティア活動を始め、子どもが幼稚園に通うようになるとパートタイムの仕事をスタート。そして32歳の時、宝塚市男女共同参画センターの推進専門員として採用され、念願だった正規雇用の夢をかなえます。

「いろんな人に助けられて、少しずつ社会に出ていくことができました。大事なのは、自分にできることはないかと常にアンテナを張ることと、自分自身が諦めないこと。もちろん挫折もあったし時間もかかりましたが、諦めず努力すればかなうし、もしかなわなくてもその過程で得られる力や人との出会いがある。それを伝えたいから、今の仕事をしているのかなと思います」

母校・神戸女学院大学キャリアセンターのスタッフとも顔なじみ。「2009年から学生のキャリアカウンセリングを担当しているので、みなさんにもお世話になっています」

答えがない時代だからこそ、大切なのは自分

自身の経験を活かし、多くの人たちのキャリア相談に乗ってきた布谷さん。

どういった悩みを聞くことが多いのでしょうか?

「組織で働いている30代、40代の方に多いのは、自分が大事にしていることと組織が大事にしていることのギャップに悩んでいるケース。本当の自分と会社から求められる役割のズレを感じてしまって、このままで良いのかなとか、会社を辞めたいという方が、男女問わず多くいらっしゃいますね」

これは、社会に出て数年経つと、誰しも一度はぶつかる問題かもしれません。今は新卒で入った会社でずっと正社員として働くのが当たり前ではなく、転職や副業、パラレルキャリアなどさまざまな選択肢があるからこそ、立ち止まって悩んでしまうのかもしれないですね。

「それから30代、40代の女性の場合、子育てでいったんキャリアを中断してから、自分のやりたいことが見えてきて、起業を考えているという相談も多いです。でも自分が起業することで、子どもや家庭を犠牲にしてしまうのではないかと、不安を抱えている方がいらっしゃいますね」

組織の中で壁にぶつかる人から起業を考える人まで、さまざまな悩みを抱える人たちに、布谷さんはどのようなアプローチをしているのでしょうか。

「今は働き方も多様で、こうすればうまくいきますよとか、このレールに乗れば悩まなくて良いですよっていう答えがない時代だから、みんな悩みますよね。だからこそ、『主は自分ですよ』と皆さんにまずお伝えしています。会社にいてもどこにいても、主になるのは自分。自分が生きる上で大事にしたいこと、働く上で求めていることや原動力になるもの。そういった自分の軸=キャリアアンカーをしっかりと見つめるしかないんです」

「主は自分」という布谷さんの言葉から、学生時代の就職活動で自己分析をしなさいと言われたことを思い出します。でも本当の自分がよくわからないというか……。自分と向き合うって意外と難しいですよね。

「自分と向き合うことが大事なのは、学生でも社会人でも、いったん仕事を離れたお母さんでも、みんな同じなんです。たとえば私が行う研修では、自分の人生を振り返って1本の曲線で可視化するライフラインチャートという手法を使って、自分のこれまでや仕事の棚卸しをしてもらっています」

「どうして、今の仕事を選んだの?」と布谷さんから逆取材。「みなさんの仕事の原点が、つい気になっちゃうの(笑)」

また、自分一人で考えるだけでなく、他の人たちと語り合うことも大切だと布谷さんは続けます。

「固定観念や先入観を外してあげる作業は、一人ではなかなか難しいかもしれません。ですから、研修やセミナーではお互いに語り合う場を設けるようにしています。他者と語り合ってフィードバックをもらうことで得られる気づきもありますし、自分がなんとなく思っていたことでも他者から承認してもらうことで自信につながります」

確かに、自分一人で考えていても堂々巡りになってしまいそうです。他の人と語り合うことで、思考を前に進めるきっかけがつかめるのかもしれません。

社会通念に惑わされず、自分自身で選択する

働き方や生き方について悩みを抱えている人たちに、布谷さんはどんなアドバイスをしているのでしょうか。

「人生や仕事において、何かを決めたり選んだりしないとといけない時は、いろんな人に意見を聞いたら良いと思います。でも最後は“本当にそれで良いの?”と、胸に手を当てて自分に聞いてあげてほしいんです。本当に納得しているのか、自分に問いかけてみてほしい。自分が本当に選びたいのはAだけど、今できることとしてBを選ぶっていう答えを自分が出したなら、たとえ納得していなくても良いと思うんです。大事なのは、ちゃんと自分が選択しているかどうかです」

しかし、自分で決めたと思っていても、社会がそうさせていることもあると布谷さんは語ります。

「自分はお母さんだからこうしなきゃいけないとか、過去の私のように知らず知らずのうちに社会通念によって選択させられている場合もありますよね。それくらい社会通念の影響は大きいんです。でも、社会は少しずつ変わっていくものだから、そんなものには振り回されないでほしい。自分でちゃんと選択したのか、社会通念に合わせてしまっていないか、自分にしっかりと問いかけてみてほしいです」

お話を聞きながら、自分がこれまでしてきた選択は本当に自分で決めたの? 周りがそうしているから、普通はこうだから、そんな社会通念によって選んだこともあるのでは? そんな疑問が頭の中をぐるぐるとめぐってしまいました。

「社会通念による影響は、もしかすると女性よりも男性のほうが大きいかもしれません。男らしくとか、泣いたらダメとか、リーダーシップを取るべきとか、男性も役割を期待されたり押し付けられたりしてきたわけですよね。これまで男性が作ってきた社会における男性側の既得権もあるので、そのために我慢してきた部分も大きいし、手放すには勇気が要ると思います」

最後に布谷さんは、こんな思いを語ってくれました。

「男女とも、自分の人生を謳歌する人を増やしたいというのが、私の一番の目標なんです。お互いを認め合い、応援し合って、人生を謳歌する。男女どちらかだけが幸せという社会はあり得ないですから。男女だけではなくて、老若男女、障がい者も健常者も関係なく、誰もが人生を謳歌できる社会であってほしいと願っています」

学内に差し込むやわらかな光がお気に入り。「“女性だからできない”と決めるのは、やさしい反面、成長の場を奪っていることも」

布谷さんの話を聞きながら、女性の生きづらさと男性の生きづらさは裏表の関係で、女性が社会通念から解放されるためには、男性も解放されないといけないと感じます。

そして、男性も女性も、社会人も学生も、みんなが迷ったり悩んだりしている答えのない時代に、それぞれが探している答えは自分の中にこそあると気づくことができて、少し心が軽くなったような気がしました。

(ライター:藤原 朋)

もっと学びたいあなたへ

キッチンで読むビジネスのはなし
11人の社長に聞いた仕事とお金のこと

一田憲子 著
KADOKAWA発行 2018

「暮らしのおへそ」シリーズをはじめ、暮らしにまつわる雑誌や書籍を手がける編集者・ライターの一田憲子さんによるインタビュー集。Webショップ「北欧、暮らしの道具店」の佐藤友子さん、カフェ「くるみの木」の石村由起子さんなど、11人の経営者が登場します。「ビジネスや経営の話だけでなく、自分のやりたいことを実現していくためにはどうしたら良いかという内容。生き方や働き方について考えたい人におすすめです」と布谷さん。堅苦しいビジネス書は苦手、という方でもするすると読めそうな一冊です。

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