多数の演奏家たちをまとめあげる!オーケストラの指揮者に学ぶチームマネジメント
時には100名を超えるプロの演奏家たちを束ねるオーケストラの指揮者。彼らはどうやって組織をまとめあげ、人々に感動を与える音楽を生み出しているのでしょうか。 オーケストラをビジネスの場面に置き換えると、オーケストラは企業、楽...
新型コロナウイルスの世界的流行が始まってから早1年。ウィズコロナ、新しい生活様式といった言葉も定着し、生活スタイルや働き方の変化にも慣れてきた人が多いかもしれません。
でも、変化に対応することに精いっぱいで、いつの間にか疲れやストレスを溜めてしまっていませんか?なんとなく体調がすぐれない。マスク生活で肌荒れしやすくなった。そんな体からの小さな不調のサインを見逃していないでしょうか。
今回は、コロナ禍という厳しい環境においても美と健康を保つための方法を、食品科学の視点から探ります。今日からでもすぐに実践できるヒントがたくさん。ぜひ日常の中に取り入れてみてください。
研究テーマは、食生活が肌に及ぼす影響、アミノ酸長期摂取の肌状態と抗ストレスに対する効果、紅茶の機能性評価など。山口大学農学部出身。神戸大学で農学修士・学術博士を取得後、横浜市立大学の木原生物学研究所で小麦の研究に従事したことをきっかけに、食品研究を始める。ゼミでは企業と連携し「美容式®アミノ酸ゼリー」「たち花クッキー」、オリジナル和紅茶といった商品を次々と開発している。
お話を伺うのは、人間科学部環境・バイオサイエンス学科教授の高岡素子先生です。
高岡先生は、コロナ禍における食生活の変化、そして心身への影響をどのように見ているのでしょうか。
「食事は単なる栄養摂取ではありません。誰かと話しながら楽しく食べることで、多くの人が心身の健康を保っています。それが難しくなった今、食べること自体を楽しめない人が増えているように感じます」
「これまでは三食きちんと食べていた人も、コロナ禍で生活スタイルが変わったことで、食に対する意識が減退しているのでは」と指摘する高岡先生。学生たちの食事調査をしたところ、極端なケースではお菓子だけ食べて暮らしているような人もいたと聞いて驚きます。
でも、一人で食事をするとつい適当なもので済ませてしまうというのは、筆者にも思い当たる節が…。食への意識を失わないために、何か対策はあるのでしょうか。
「たとえば自分で何かテーマを決めてみるのはどうでしょうか?世界のあらゆるチーズを食べてみるとか、いろんなメーカーの豆腐を食べ比べてみるとか。自分なりの楽しみを見つけて、生活に取れ入れてみると良いかもしれませんね」
なるほど!楽しみ方を少し意識してみるだけで、食への興味関心を取り戻すきっかけになりそうです。
コロナ禍でつい溜まりがちなストレスについては、食事面でどんな対処法があるのでしょうか?
「ストレス対策としては、まず腸内環境を整えることが大切です。腸と脳はお互いに影響し合っていて、腸が整っていれば精神的に安定し、逆に精神が安定していれば腸が整います。この現象は脳腸相関と呼ばれていて、近年さかんに研究されています」
緊張するとお腹を下してしまうなど、精神状態が腸に影響することはイメージしやすいですが、逆に腸内環境が精神に影響することもあるんですね。ストレス対策のために、腸からアプローチできるというのは新鮮です。
では具体的に、どんな食材を摂ると良いのでしょうか?
「代表的な食材は、海藻、大豆、ナッツ。あとはオクラ、メカブ、納豆といったネバネバした食品もおすすめです。海藻やネバネバ食品には水溶性食物繊維が含まれていて、有用菌、いわゆる善玉菌を増やしてくれます。不溶性食物繊維を含む大豆やナッツは、要らないものを巻き込んで腸をきれいにしてくれます」
「腸内環境を整える食品って、普段の食生活だとあまり摂らないものが多いんです。最近食べていますか?」と高岡先生。海藻を食べたのは直近でいつだったか…と思わず考え込んでしまいます。
「毎日絶対に食べようと思うとしんどいですよね。私もずぼらなので(笑)。だから、頭の片隅に置いておいて、最近食べてないなって思ったら食べる。それくらいでも良いんです」
確かに、毎日1品食べる、などの決まり事を作ると、かえってストレスになってしまいそう…。高岡先生の大らかなアドバイスに少しホッとしました。
ストレス対策として、高岡先生がもう一つ取り上げたのは、テアニンという成分です。
「テアニンはアミノ酸の一種で、緑茶、特に玉露のような高級なお茶に含まれている旨味成分。精神を安定させる作用があるので、ストレス緩和におすすめです」
高岡先生の研究室で2018年に開発したオリジナル和紅茶には、このテアニンが多く含まれていると言います。
「本来、紅茶に含まれるテアニンはそれほど多くないのですが、オリジナル和紅茶で使用した鹿児島産『べにふうき』という茶葉の紅茶成分を調べるとテアニンの量が特に多いことがわかりました。また、水出しでもテアニンを高濃度で抽出できることも特徴です」
初めて「べにふうき」を試飲した時、「今までに飲んだ紅茶とは違う、奥に緑茶のような深みが感じられる味に驚きました」と高岡先生。水出しにすると特に香りと甘さが引き立つのだとか。
べにふうきを使った紅茶は、神戸女学院大学オリジナルの商品が学内のセブンイレブンで販売されているほか、通販で手に入る商品もいろいろ。おいしい紅茶をゆったりと味わえば、リラックス効果もより高まりそうです。
ストレスやマスク生活の影響で、肌荒れが気になる人も多いのではないでしょうか。食事での肌荒れ対策についても伺いました。
「きれいな肌を作るには、抗酸化物質を豊富に含む発酵食品がおすすめです。特に私たちの研究室では、米糀甘酒について研究を進めています。実験で抗酸化物質の量を調べたところ、発酵が進むほどに抗酸化性が高まっていくことがわかりました。
また、米糀甘酒を飲むことで肌がきれいになったという実験結果も出ているそうです。肌状態は、水分量、水分蒸散量(バリア機能)、キメの3つを測定することで調べていると言います。
肌のキメまで数値化できるとは!と驚いていると、「なんとなくきれいになった、ではなく数値化するのが科学です。大変なので学生からは不評ですけどね」と高岡先生は笑います。
米糀甘酒ならどんなものでも効果は同じなのでしょうか?
「市販品よりも手作りのほうが、糀菌を生きたまま摂取できるため、より効果が高いと考えられます。お米に糀をまぶしたものがスーパーで売られているので、そこにお湯を注いでヨーグルトメーカーに入れておくだけ。一晩置けば甘酒ができますよ」
飲み方にも何かコツがあるのでしょうか。
「時間栄養学という分野が最近注目されています。成分を摂取する時間帯によって、効果が異なることがわかってきているんです。お肌のために米糀甘酒を飲むなら、夜がおすすめ。米糀甘酒はアミノ酸を多く含んでいるのですが、朝と夜にアミノ酸を摂取して比べた実験では、夜に摂取したほうが、肌状態がより改善されるという結果が出ています」
肌は寝ている間に作られる、とはよく聞きますが、実際に実験結果が出ているとは知りませんでした。
高岡先生がもう一つ、肌対策としておすすめする食材は魚。学生たちの食事と肌状態を調べたところ、唯一、肌の水分量と相関が見られたのは魚だったと言います。
「どんな食事をしている人が、肌がきれいなのか。食事を調査し、肌状態との相関関係を調べると、サバ、アジ、イワシなどの青魚や、マグロのトロなど、脂の多い魚を摂っている人は肌状態が良いことがわかりました。これらの魚に多く含まれるオメガ3脂肪酸が、肌状態にプラスの影響を及ぼしていると考えられます」
「学生さんの食事を調べても、全然魚を食べないんですよね。でも、肌がきれいな人は魚を食べてるよって言うと、みんな急に食べ始めます」と高岡先生は笑います。
最後に、高岡先生ご自身が普段から心掛けていることをお聞きしてみました。
「食事・運動・睡眠、この3つが揃うことが美容にも健康にも重要です。だからまずは、しっかり三食食べること。あとは、疲れた日にはたくさん寝たり、ストレス解消のために走ったりしています」
「でもおやつも食べるし、コーヒーも大好きなのでがぶがぶ飲みますよ」と高岡先生。先生の大らかなスタイルを聞くと、厳しい制限が必須なわけではないんだと少し気持ちが楽になります。
「自分流のガス抜きを知っておくと、強みになると思います。私の場合は、甘いものを食べることと走ることがガス抜きなんです。学生さんたちにもよく話すのですが、ストレスを溜め込んでパンクしてしまう前に、自分で気付いて対処することが大事。科学とは客観的にものを見ることですから、サイエンスを志す学生たちには、自分自身を外から客観的に見る力も養ってほしいんです」
学生だけでなく、より多くのストレスを抱えやすい30代40代の女性にも、そのことを知ってほしいと高岡先生は語ります。
自分を客観的に観察する。そして、自分なりの対処法を持っておく。それを意識するだけでも、ストレスとの付き合い方が少し上手になれそうです。
高岡先生のお話を通じて、食事だけでなく様々な面から、美と健康を保つためのヒントを得ることができました。様々な食材が持つパワーを借りながら、自分の心身にうまく向き合っていきたいと思います。
(ライター:藤原 朋)
ジャック・アタリ 著
プレジデント社発行 2020年
“欧州最高峰の知性”と称されるフランスの思想家、ジャック・アタリ氏による、食に関する壮大な人類史。「食には生命を維持する以上の役割があり、政治・経済・文化・産業・性・哲学・環境・芸術など、あらゆることに結びついている」というアタリ氏の指摘は、「食事は単なる栄養摂取ではない」という今回の高岡先生のお話ともリンクします。食への興味関心を改めて持ち直すきっかけとして、おすすめの一冊です。
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